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執筆者: 酒井謙吉
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昨年4月ニューヨークのマンハッタンを舞台にして第4回PEN World Voices Festival (主催:PEN American Center)が開かれました。 私も参加してきましたというふうに書いてみたいところなのですが、そのようなイベントがあること自体も事前には知りませんでした。 さらにPENというこの国際組織は、International Association of Poets, Playwrights, Editors, Essayists, and Novelistsの略称でありますので、残念ながらなぜかここには翻訳者(Translators)のタイトルさえ含まれていない協会ですので、私の持っている情報網にも引っかからなかったわけです。

さて、世界33カ国から135人の著者が参加したこのイベントでは、イベントでの内容は、アメリカ国内の主な有力紙でもこぞって取り上げられました。 翻訳者の冠が着せられてはいないPENではありますが、“Translation and Globalization”という分科会がきちんと設けられていたのです。 その分科会でのオープンニング・スピーチを行いましたロスアンジェルス・タイムスの編集者であります Steve Wasserman氏は、アメリカで出版される書籍の僅か3%が翻訳物であって、その3%というのも技術的なマニュアル本であったり、技術関係の参考書籍がほとんどであるという指摘が行われました。 比較としてその対極にあるのがイタリアだとのことで、イタリアで出版される書籍の70%は、翻訳物だということです。

このいささかセンセーショナルな3%という数字が一人歩きした感のある会場内での空気を受けて、分科会での議論がたちまちのうちに白熱化し、パネル・ディカッションでは、政治家や報道関係者をはじめアメリカの一般世論がなぜにこうも世界情勢にあまねくも疎く、他国の文化や言語を理解しようとしないのかという、現状を如実に物語るこの数字に対して非難や糾弾の狼煙が各国の文学者や編集者からいっせいにあげられました。

それは、とりわけ各国で文学書の出版にたずさわる関係者の間での危機感や焦燥感を表明したものであり、自国語で書いたストーリー性も十分あり、読み物としても超一級としての文学作品は英語に翻訳されない限り、アメリカに住む人々のもとに紹介されたり手元に届いたりすることは決してありえないという、言語による排他的な現実世界を強く認識した瞬間でもありました。

逆に多くのヨーロッパ諸国、そして日本では、「ハリーポッター」などの翻訳物にベストセラーのトップの座をいとも簡単に譲り渡してしまい、多くの自国の著名なベストセラー作家たちでさえも自国での出版業界の中にあっても安閑としてはいられないという強い危機感の中で、執筆せざるを得ないという報告もありました。 翻訳をする、あるいはされるということは、文学者や出版関係者にとってはまさに両刃の剣となりうるのだという厳しい現実が潜んでいることをはからずも物語っていました。

PENの本大会にご参加された文学者は、ノーベル文学賞を受賞されたアメリカの女性黒人作家であるToni Morrisonをはじめ、各国のノーベル賞候補者級の方々であったようですが、そのような超トップクラスの文学者や作家の集まりにおきまして、翻訳についてこのような白熱した真剣な議論が戦わされたというのは、何はともあれ、翻訳を生業にする私のような人間から見れば、翻訳に対する認識を高めるという観点から見て大きな前進が見られたのではないかと思います。

このPENでの討論を通じて、3%しか翻訳書籍が出ていないアメリカの出版業界においては、翻訳市場は思っていたよりもずっと小さいような気がしてまいりました。 また翻訳市場が小さいことによって、世界各国の優れた作家の作品がアメリカではまったく紹介もされず、作家の名前も作品も聞くことさえできないという現実は、本当に悲しむべき傾向だと思います。

アメリカで翻訳されて出版されるものが、海外で作られているソフトウエアやハイテク機器のマニュアル本だけであるとしたら、一般のアメリカ人が持つ世界観はあまりにも偏った、いびつなものしか生まれてこないような気がいたします。 アメリカが、そして世界がもっとバランスをとって、単に営利だけを追求するために翻訳をするのではなく、世界の文化が醸し出されて、香ばしい文化のアローマが感じられるような翻訳と翻訳者とが将来に向けて育ってもらえないものでしょうか。 その道はしかしながらこの経済状況下におきましては、限りなく長く険しいものではありましょうが。

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