Shigotosagashi.com - バイリンガルのための就職情報サイト

執筆者: 酒井謙吉
Pacific Dreams, Inc.
25260 SW Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070
Phone: (503) 783-1390
Fax: (503) 783-1391
www.pacificdreams.org
技術翻訳やビジネス・コンサルティングを主要業務とする Pacific Dreams, Inc.
今年最後になりましたこのコラムでは、特に翻訳の原点に立ち戻ったお話を書いてみたいと思います。 実務翻訳(産業翻訳ともいいます)の世界は、ITを中心とした製品マニュアルの大ボリューム翻訳需要がこの業界全体を毎年押し上げてくれていましたが、今年後半から起きた金融危機以降、グローバルでの景気後退がIT業界にもその影響が如実に現れ始めています。
 
さて、大ボリュームのITマニュアル翻訳を限られた短い納期内で完了させるためには、前回のコラムでも申し上げましたように、TRADOSという翻訳支援ツールに依存せねばならず、このTRADOSなしには、マニュアル翻訳は、にっちもさっちも先には進みません。 現在では、多くの個人翻訳者の方々でもTRADOSの個人翻訳者向けのソフトウエアを購入され、毎日、TRADOSとホームオフィスで格闘されている方がますます増えてきております。 その一方で、TRADOSなどには、見向きもされないで、翻訳支援ツールとは一線を仕切った堅固なるスタンスをもって翻訳に日々いそしんでいる方々もまだまだ大勢いらっしゃいます。

それぞれの陣営の方々には、翻訳の仕事に取り組まれるポリシーが強く脈を波打っておりまして、翻訳支援ツールを使うかどうかの判断は、どのような文書の翻訳を手がけるか、そして翻訳のレートや翻訳するボリュームをどのように考え、対応するかによって決まってくるといえます。 翻訳支援ツール全盛の世の中ではありますが、決して翻訳支援ツールを使わなければならない翻訳ばかりが常にひしめいているわけでもないのです。 翻訳支援ツールの使用を必要としない翻訳も当然のことですが、今後の需要としてまだまだ限りなく存在します。

以前読んだことのある「見える化」というトヨタのやり方を研究して書かれたビジネス書の中で、大変気になる事例が載っていましたので、皆様にもシェアさせていただきたいと思います。 それは「見える化」の落とし穴という章の中で、ITへの偏重という指摘が実例を交えて書かれていました。 事例として紹介されていた某住宅設備メーカーでは、顧客や代理店からのクレームをデータベース化することによって各担当部門にクレーム情報がタイムリーに共有化され、クレームに対する担当部門間での協力体制も向上して、クレーム対策の効果が浸透することを狙っていたのですが、実際にはそのようにはならなかったという報告事例でありました。

さてこの会社ではいったい何が起こっていたのでしょうか。 営業部門でデータベースに入力したクレームは、あとは、製造部門が見て、適切な対応をしてくれるはずとの“思い込み”があったため、逆に担当部門間でのコミュニケーション不足が散見されるという不測の事態を招き、データベースそのものをもともと「見る」意思のなかった製造担当者にとっては、かえって「見えない化」を助長してしまったという皮肉な結果をもたらしてしまったということでした。

この事例は、まさしく翻訳支援ツールで構築される翻訳メモリー(TM)と呼ばれるすでに翻訳された文章のデータベース化にそっくりあてはまるようなものではないかと私はすぐに察しました。TMがすでに構築されているから、そのTMどおりの翻訳をすればあとはそれでよいだけだという思い込みが翻訳者にあれば、表現に難のあるようなTMをそっくりそのまま使っても、何ら疑うこともなく、そのことでコミュニケーションがはかられることもなくなってしまうわけです。

アメリカにある他の翻訳会社のプロジェクト・マネージャーとTRADOSを使ったプロジェクトの問題点についてミーティングをしていたときのことですが、彼は、そのときTMのことをLegacyと呼んでいました。最初は、TM = Legacy かと単純に理解していたのですが、どうも彼がTMのことを敢えてLegacyと呼ぶのは、つまりは、品質上問題のあるTM、あるいは、改善を要しなければならないTMであるとの意味合いを込めて使っているということが会話の前後関係から次第に分かってきました。このTMをLegacyにしてしまうかどうかは、まさにTMを使って翻訳を行う翻訳者の真贋(しんがん)にかかっているのではないかとそのときにあらためて気付かされました。

トヨタでは、自動化という呼び方に対して、社内では敢えて「自働化」という漢字を当てはめているとききます。 それは、機械を使いこなす主体は、あくまでも人間なのであって、人間が機械に使われるからではないという強い意思表示をトヨタでは敢えて“にんべん”のある漢字(働)を使って表現しています。 翻訳もまったく同じだと思います。 翻訳をするのは人間なのだという原点に立ち返って今年を振り返り、新しい年からまた始まる翻訳事業に対する期待と希望とを託してみたいと考えています。

仕事探し.comはワシントン州・オレゴン州を中心にバイリンガルの人材を紹介・派遣しています。


履歴書をお持ちの方はクイック登録が可能!


優秀なバイリンガルをお探しの企業様はこちら


個人情報・履歴書のアップデートはこちら





帰国GO.com - 留学生のための就職活動サポートサイト
日本での仕事をお探しの方は、帰国GO.comへ



Shigotosagashi.com / 仕事探し.com - ワシントン州・オレゴン州の求人情報サイト

Global Career Partners, Inc.
Copyright © 2005 - 2015 Global Career Partners Inc. All rights reserved..