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執筆者: 酒井謙吉
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今回の「翻訳事始め」は、上智大学文学部前教授であります安西徹雄氏の幻の名著「英語の発想」(講談社現代新書)をベースにさせていただきまして、日本語と英語との間に存在する表現や構文上の違いについて、言語学的な比較をできるだけ平易に検討し、かつ解説してみたいと思います。

「幻の名著」とあえて記しましたのは、この著書はすでに絶版となっているからでありまして、古本屋さんは別として、一般書店やアマゾンからでは購入することが出来ないからです。私の本書に関しての印象としましては、日本語と英語との言語学的な違いについてこれほど分かりやすく、かつ懇切丁寧に一般読者向けとして書かれた書籍は恐らく今までにも前例がなかったのではないでしょうか。しかも、安西教授の目線は、あくまでも翻訳者としての高さでありまして、翻訳を実際に行う現場に身を置いて、比較・検討を行い、「翻訳読本」としても大変すぐれた構成となっています。

著作の中における安西教授の立場は、日本語と英語間で対照言語学を研究する研究者であり、なおかつご本人自身が翻訳者としての見事な試訳を提供されているというところにまずは、私の共鳴を覚えました。日本語と英語との間に存在する決定的な構文上の違いに由来するいくつかの特徴的キーポイントによって、そのまま英語を日本語に直訳したのではどうにもこうにも座りの悪い、日本語としてはきわめて不自然な翻訳になってしまわざるを得ない状況に陥ってしまうのは、翻訳したことのある人であればどなたでもご経験があるはずです。

安西教授がご指摘されている特徴的キーポイントとは以下のような比較対照であります。
  1. 英語は名詞中心構文であるのに対して、日本語は動詞中心構文である。
  2. 英語は、<もの>を主語とした無生物主語構文が数多くあるのに対して、日本語ではあくまでも人間を主体とした構文にした方がはるかに自然な文章になる。
  3. 英語では、重要な用件は文章の前部に置かれるのに対して、日本語では、文末に置かれる傾向が強い。
  4. 日本語は動詞の働きによって、主語がわかるような構文になっており、そのために主語をあえていちいち書き表す必要がない。
  5. 日本語には、英語で使われるような間接話法が存在しない。(日本語では、一般に直接話法で表現する)
  6. 日本語では、物事全体が自然にそのようになったというような状況関係的な表現を好むのに対して、英語では人間の行動中心として論理的な把握をし、「(動作主としての)主語+他動詞+目的語」という語順の形式による表現を好む
(1)から(6)までの比較検討は、かなり文法的な内容も含まれてはおりますが、例えば、4)で指摘されている日本語における主語の欠落については、“日本語とは、主語がなくても意味が通じる「以心伝心」の言語”だということは、一般的にも広く認知され、それは、日本語という言語のもつある種の宿命的な性格であると本書を読むまではかくいう私自身も、かたくなに信じ込んでいました。

しかしながら、よく考えてみますと、なぜ日本語に主語がなくとも、少なくとも日本人には主語が誰を指すのかをどうして理解できるのか(ときどき理解できないこともあるのですが)ということになりますと、ほとんどの日本人は答えるすべさえ持っていないことに気づかされるわけです。安西教授が引用した川端康成や谷崎潤一郎といった日本の文豪の小説をコロンビア大学名誉教授であります(故)サイデンステッカー教授の英訳した例を用いて、主語のない文章に対して誠にもって詳細なる解析を試みています。

そこでは、私が今までに意識さえもしたことがないような深遠なる結論を導き出してくれています。日本語に存在する敬語や謙譲語などの使い方で、誰と誰との間の話であるのか、小説を読み進んできた読者であればそれが自然と判明することができるような仕組みになっているというのです。ですから、いちいち、主語を書かなくても状況判断、ならびに登場人物同士の間にある人間関係からの推察によって誰が誰に対して話をしているのか、ほぼ間違いなく見当がつくものだというわけです。

2人の文豪が書いたそれぞれ主語のない文章を英訳されたサイデンステッカー教授は、英語では、それこそいちいち主語をこまめに入れなければならないわけで、敬語や謙譲語といった言葉の用法が存在しない英語では、主語がまったくなければ誰が誰に対して話をしているものなのか、推察することさえきわめて困難となります。

このような主語のない文章に長い間、慣れ親しんできた日本人の方々は、半導体製造装置の操作マニュアルのようなテクニカルな文書の中でも、主語のない文章を(割と平気で)お書きになります。人間関係の機微が展開される小説舞台の中でならいざ知らず、マニュアルのような敬語や謙譲語の使い方からは縁遠い技術文書の中で主語を省かれますと、日本人であり、ベテラン翻訳者である人といえども、頭をひねり続けながら、推察の域を出ない翻訳を強いられることになります。これは、今だに遭遇することのある翻訳者泣かせの代表例だと申せましょう。

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