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執筆者: 酒井謙吉
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「はじめに言葉ありき」これは、新約聖書の中にあるヨハネによる福音書の中の有名な書き出しの部分です。この後に、「言葉は神と共にあり、言葉は神であった。この言葉ははじめに神と共にあった」と続きます。欧米文化の精神的支柱をなすキリスト教の新約聖書には、至るところに言葉の持つ偉大さや重みがあますところなく集約され、表現されています。この福音書の引用を聖書から引くまでもないことなのですが、欧米社会では、言葉を使って言い表す、あるいは書面で書き残すことの重要性が、他の文化と比べてもとりわけ大きいように思います。そしてそれらが、契約社会である欧米文化の根幹的な礎になっていると言うことができます。

文字通り経営のV字型リターンをコミットし、それを見事に達成させた日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼CEO(残念ながら、最近は成長神話に陰りが見て始めていますが)は、当時ルノーから日産に出向いて幹部社員と最初にミーティングを行った際に、言葉の定義を明確にし、社員それぞれの言っていることが共通の認識する意味であることを徹底的に確認させたということをどこかで読んだことがあります。これなどは、あうんの呼吸で互いの理解を得ようと試みる日本的なコミュニケーションのあり方とは、まさに対極的に位置するやり方ではないかと申せます。このような言葉の確認の手順を経ることによって、社内のコミュニケーション事情が飛躍的に改善できたとことは想像に難くないでありましょう。

翻訳を行っていて、いつになっても難しいと感じるのは、適確な訳語の選択です。日本語で普通使われている言葉に対して、英語では何通りもの訳語が出てくることがあります。逆(英語)の場合もまた然りです。その何通りもある訳語の中から翻訳者は、当然のことながら最も適切な訳語を選ばなければならないのですが、ときには辞書にある訳語だけでは十分でない場合も出てまいります。そのため、翻訳者が苦し紛れに訳語を自分で創作してしまうこともあるようです。明治時代の知識人の多くは、そのようにして日本語にはもともとなかった英語の訳語を新しい創作語として生み出しました。慶応大学創立者である福沢諭吉が、Competitionを“競争”という言葉で訳したのは有名な話です。明治維新が起ころうとするまで、日本には競争という言葉も概念もなかったというのは、大きな驚きです。当時の幕府役人は、この訳語を好まず、西欧社会の熾烈な競争が日本に入ってくることは忌々しいことだと諭したというのもなんともこっけいな話ではないでしょうか。

最近新聞などでよく眼にするよいうになった言葉のひとつにAccountabilityという言葉があります。 もともとは、会計用語としてもっぱら使われていた言葉のようですが、昔の辞書を引くと、「責任」とか「義務」とかいう訳語ぐらいしか載っていませんでした。今では、それが“説明責任”という訳語としてすっかり定着してきたようです。私も学生時代に、ResponsibilityとAccountabilityとでは、同じ責任でもどのような違いがこの二つの言葉にはあるものかと長い間、疑問を抱いていました。当時は、説明責任などという日本語も、またそのような概念さえも存在していませんでしたので、どちらの言葉も単に「責任」という訳語で済ませていたわけです。しかしながらここにきて、経営者が企業経営の会計報告を株主総会や取締役会で行う、政治家が国民に対して政策経過を報告する、病院の主治医が患者本人や患者の家族に対して、病状を正しく説明するというような姿勢がますます重要になってきたため、頻繁に日本でも、特にマスコミでこの訳語が取り上げられるようになりました。

それに対して、Responsibilityの方は、厳密にいえば、「結果責任」であり、かつての日本ではこの結果責任さえ釈明できれば、外部の人々に対して途中経過をその都度いちいち説明しなければならないという必要もありませんでした。さらに結果責任が相手側の負のダメージや損害につながるような場合には、今度は、Liabilityという法的補償措置という問題にまで発展してまいります。これは、「(損害)賠償責任」と訳されますが、やはりもともとの日本に存在していた概念ではなかたのですが、昨今の日本での訴訟急増に伴い、使われる頻度も増えつつある言葉です。

このように「責任」という日本語ひとつ取ってみても3つの英単語が選択肢として相応することがわかります。しかもその日本語訳も時代の要請と欧米文化(あるいは文化のグローバル化)からの流れで訳語の変化を余儀なくされます。そしてより厳密に適合するように訳語も進化の過程を経て洗練され、収斂されてまいります。翻訳もこれらの流れに合わせた訳語を的確に選択し、時代に即した文章にしていくことがむしろ自然なのではないかと私は考えています。これからも新しい訳語は、経済や文化のグローバル化の潮流に伴い、ますます栄枯盛衰が頻繁に訪れることでありましょう。

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